第4章  これからの展開と発展


1.新タイプのお好み焼きビジネス



 最近になってお好み焼き市場に思わぬ所から、思わぬ伏兵が現れた。「お好み焼き宅配業」である。

 もともとこの宅配お好み焼きは、宅配ピザ業界がしのぎを削る中で、売り上げの伸び悩みからお好み焼きをメニューに加えることに踏み切ったもの。この動きは、関西を中心に`89年から相次いでいる。

 宅配ピザ業界は、ドミノピザがマスコミに大々的に取り上げられてから世間で注目されはじめた。`87年になると、FCを採用する100を越えるチエーンも生まれた。この調子ではハンバーガーに続く第2のビックビジネスの旗手になると期待され、業界紙も毎号関係記事を取り上げ、大いにもてはやされたものが`88年をピークにかげりが見え始め、大幅に戦線を縮小するチェーンも現れた、というのが宅配ピザ業界の現状である。それらが衰退した理由は、安易な参入が続き同一エリアに5社、6社と出店したこと。粗悪な品をただ届けるだけで、高い料金をとる店が現れたこと。まだ市場が十分育っていない中に、宅配ピザは高いだけという不信感を生み出していったことがその理由である。

 このように衰退ムードが漂う中で、ピザとともに異種商品を取り入れる店が現れた。それに選出されたのがお好み焼きなのである。第1章2.で述べたように、ピザとお好み焼きには共通点が多い。お好み焼き宅配業が生まれても何ら不思議はないのである。

 関西を拠点にピザ宅配店「ピザ・ファーマーズ」を展開するファーマーズ(本社大阪市、川辺清社長)は`90年2月をメドに直営全店にお好み焼きを導入した。「ピザ・ファーマーズ」は`89年10月、大阪東住吉の直営店で実験を開始。お好み焼き宅配が好調なため導入可能と判断した。メニューはプレーンサイズ10in(25cm)1,000円のベースに200〜600円のトッピングを好みでチョイスする、とピザ感覚。他にもミックスメニューとして1,400〜2,800円まで現在7種類ある。鉄板ではなくピザ用のオーブンで上と下から料理に最適な熱風(高温、短時間)で焼き上げ、ふわふわサクサクしているのが特徴である。同社は現在、飲茶やチキンナゲット、ジェラートのメニューも扱っており、宅配ピザ業界としてはまさに異色であるといえる。

 同じ関西に拠点を持ち15店のピザ宅配店を展開する「ポケット・フーズ」(本社奈良県王寺町、大原義洋社長)でも`89年からお好み焼きを導入、好評を得ているという。

 また、新しい形態のお好み焼き店舗ではないが、市販のお好み焼きがある。以前京都の「喜代」というお好み焼き店で、2分ほど解凍して2〜3分電子レンジかオーブンで加熱するとそのまま食べられる冷凍お好み焼きが開発された。新しく登場したお好み焼きは従来の冷凍品、粉だけのタイプとは違い真空パックのピザの要領でお好み焼きをパックしたもの。スーパー等ですでに販売中である。