第3章  消費者の目、経営者の目、お好み焼き


2.お好み焼き新時代の招来


ニーズ自体の広範囲さ



 無限大の可能性を持つお好み焼き店は、すでに全国で2万5千店をこえている。大阪では年間約1,300店が開店し、同数の店が閉店しているという競争率の高い商売である。消費者のニーズへの対応が大きな課題となる。

 同席者とのコミュニケーションを円滑にするセルフスタイルだが、この方式の店は減少の時代に入っている。昔はそれが提供法のすべてであったが、デメリットに気付いた一部の企業では、新規開店にセルフスタイルを導入しない傾向にある。最大のデメリットは、客が焼くことにより、店のオリジナルな味を打ち出せないことにある。

 ソースはもとより、味つけに個性が要求されると見込んだ高級指向をめざす企業では、尚更その傾向が強い。「ぷれじでんと千房」など接待ニーズも取り込んだ店では、演出効果も含めて技術を持った店サイドで焼きあげ成功している。「ロイヤルとうりゃんせ」も付加価値を付けることで焼き順の過程を複雑にし、店サイドで焼きあげて提供している商品もある。広島風の場合は、薄いクレープ状に焼きあげるところからして技術を要し、客が焼くわけにはいかない。

 また、高級店のニーズに対応していく店は、鉄板焼きメニューを充実させている。そして、それに伴うアルコールの強化と内装設備である。高級店の平均客単価は2,000〜2,500円。単価アップをはかるために、鉄板焼きとお好み焼きを組み合わせたコースメニューを豊富にとりそろえている。

 最後に流動的な女性客をどのようにつかんでいるか見てみよう。まずヘルシーさを訴え、数年前大ブームした広島風がある。また分量コントロールができるメリットを生かしたプチサイズの組み合わせで提供している店もある。「とうりゃんせ」の一口焼きがそうである。ソフトドリンク、デザート類の充実も忘れてはいけない。

 この様に、女性客にはデザートの充実が、男性客にはアルコールの充実が店の繁盛を左右する大切な要素となっていることは、見逃せない事実である。