序 章



 庶民の味、お好み焼き。お好み焼き業界は「お好み焼き=女子供のおやつ」、この連想イメージが根強く、外食業が取り組むべきまともな商材としては、久しくかえりみられることがなかった。ところが、ここ数年来異変が起こっている。セルフクッキング方式からクッカークッキング方式に切り換えることにより、商品のオリジナリティ確立の成功事例が増大した。あの店でしか味わえない味の多数出現が、お好み焼きの市民権獲得の原動力となった。

 従来職人技術が存在し得なかった、つまり料理としての権威性と枠組みが皆無だったことがかえって幸いして、自由奔放なアイデア商品が輩出した。食材料、調理器具の類似性から発想された鉄板焼きとのドッキング、クロスオーバーも商品開発余地を大幅に拡大した。これによって少数材料多品目メニューの合理性が取り込まれることになった。また、演出性の高いステージ感覚が、お好み焼きにエキサイティングな楽しみ方を付与した。若い消費者にとってはレトロブーム(懐かしさというより斬新さ)の商品のひとつとして写るとにもなった。以上のように、単にリバイバルしたのではなく、新しい生命が吹き込まれ、強力な商品力を伴って、ここに注目商品が誕生したのである。

 業態的にも、ファーストフード部分はたこ焼きが受け持ち、ディナータイプ部分は鉄板焼きが受け持つ、という具合にあらゆるニーズ対応が可能となった。旧来の単一マーケット商材から、マルチマーケット商材へと飛躍を遂げたのである。

 このように、大阪の味の代表とされるローカリティの強い食べ物であるお好み焼きが「お好み焼き新時代」と言われるまでに急成長し、定着するまでになった理由は何だろうか。また、今後お好み焼きはどのような展開をみせるのであろうか。