第1章 お好み焼きとはいかなる食べ物であるか
2.お好み焼きは今・・・
今、確かにお好み焼き人気やビジネスとしての有望性を指摘する声は多い。
いわく、「提供方法次第でおやつにも、昼食にも、夕食にも、酒のさかなにもなる」「ヘルシー」「自分で焼く楽しみと同席者とのコミュニケーションが円滑になる」「デートコースにもってこいの食事」「男性客を取り込めば、潜在需要は大きい」「原価率が低くてすむ」等、お好み焼きは消費者にとっても、経営者にとっても魅力的な食べ物である。東京には、関西系の「お好み焼き学校」が数校あり、脱サラ組の人気を集めるといった現象もある。
このように、お好み焼きが人気商品となった根底には、世界各地に広がる小麦粉文化ともいうべき流れがあるということを忘れてはならない。お好み焼きを固定概念にとらわれず、「小麦粉+具」ととらえると、それは驚くべき広がりをみせる。韓国のパジョンをはじめインドのチャパティ、イタリアのピッツア、フランスのクレープなどをみても、小麦粉文化は世界の人々の生活に深く根づいていることがよくわかる。
外見だけを見ればパジョンが一番日本のお好み焼きに近い。某TV番組では日本のお好み焼きのルーツのひとつではないかと言っていたほどである。しかし、一般になじみが深く、一番比較しやすいものはピッツアであろう。ベースになる小麦粉、自分の好みで選択するルールに縛られない具。それらの多種類の具は、安価なものから高価なものまである。つまり、価格設定に幅をもたせることができるというわけである。お好み焼き店がピッツア専門店のように、ファッショナブルになってきても何ら不思議ではないであろう。
しかし、チーズが苦手という人の多い日本においては、ピッツアのターゲットは絞られる。それに反してお好み焼きは日本人全体、老若男女を問わず、その味覚に合った食べ物といえる。もともと日本人は焼き鳥、照り焼きなどと一緒で、醤油やソースのこげる香りを楽しむ傾向がある。このような根強い支持基盤があって、お好み焼き産業は今、食産業の中で非常に有力視されているのである。